Monthly Archives: 11月 2022

2022-11-25 ,

phscrollの修正

org-modernと組み合わせたときにいくつか問題が目に付いたので修正しました。ついでに修正した点もいくつか。

misohena/phscroll: Enable partial horizontal scroll in Emacs

主な修正点:

  • phscroll-use-fringeをdefvarからdefcustomへ変更
  • 左右スクロールコマンドでポイント位置を動かすオプションを追加
  • 左右スクロールコマンドでスクロールする方向を反転するオプションを追加
  • Shift+マウスホイールでのスクロールに対応
  • orgテーブルの直後を余分にスクロール領域にしてしまうミスを修正
  • フィールドテキストがあるときに正しく動作しない問題を修正
  • org-phscroll使用時はmodification-hooksでは更新せずfontify時に更新するように変更
  • font-lockへの登録方法を修正
  • ピクセル単位で幅計算するオプションを追加(実験的)

左右スクロールコマンドが使いづらいという指摘があって私も同感で使っていないのですが、ポイントも一緒に動くようにしたりして少しはマシになりました。元々Emacs標準のscroll-left(C-x <)、scroll-right(C-x >)を真似た物でしたが、それ自体使いづらいですからね。

ついでにマウスのホイールに対応してみました。プラットフォームによってホイールのイベント名は変わるそうですね? 知りませんでした。mouse-wheel-up-eventやmouse-wheel-down-eventという変数にシンボルが格納されているのでそれを使うのだとか(Misc Events (GNU Emacs Lisp Reference Manual), mwheel.el)。

font-lockのキーワードまわりをあまりよく理解していなかったので必要な部分だけ少し勉強しました。font-lock処理(fontify? highlight?)(font-lock-fontify-keywords-regionを参照)はキーワードリストを上から順に処理していきますが、一つのキーワードで対象範囲の最初から最後までを処理してから次のキーワードをまた最初から処理する流れになっています。何となく複数のキーワードをまぜこぜに処理していくような気がしていたのですがそんなわけはありませんでした。一つの関数でマッチからハイライトまでをやってしまう場合、いくつか注意すべき点があります。基本的にmatcherの関数はre-search-forwardの代わりに呼ばれているので、tを返す場合はmatch-dataも有効でなければなりません。nilを返すのであればその限りにあらず。どちらにせよ一度に一箇所しか処理してはいけないという制約はありません。範囲内全てを一度に処理することは可能です。ただしmultilineや無限ループ回避のコードには注意が必要。

orgやorg-modernのfont-lock処理が終わってからでないと正しいテキスト幅が計算できないという問題に気がつきました。phscrollではテキストの幅を正しく計算することが求められます。これまではオーバーレイのmodification-hooksでテキストの変更を検出して更新処理を行っていましたが、それでは不十分でした。orgがリンクのパス部分を非表示にする(invisibleテキストプロパティにシンボルorg-linkを設定する)とテキストの変更無しに幅が縮まります。org-modernがテーブルの縦線を細くしてもテキストの(ピクセル)幅は縮まります。phscrollはその直後に水平スクロールに必要な幅の計算をしなければなりませんでした。

これまで幅の計算は文字数単位で行っていましたが、org-modernがテーブルの縦線を細くしてしまうと文字数は変わらないのに全体のピクセル数は小さくなってしまいます。すると縦線(テーブルの列)が沢山あるほど右側に無意味なスペースが空くことになっていました。これはピクセル単位で幅の計算をしなければ解決できません。

ピクセル単位での幅の計算は window-text-pixel-size 関数を使用しました。自分でテキストプロパティやオーバーレイを解析して計算しても良いのですが、なかなか完璧には出来ないので。

window-text-pixel-size 関数を使うにしても色々とやっかいな点があります。一番やっかいだったのは、折りたたまれて非表示になっているテキストに対してfont-lock処理が働く場合があることです。非表示になっているので window-text-pixel-size で計算しても幅は0になってしまいます。この問題に対しては、折りたたみ部分を隠すためのオーバーレイ(invisible=(outline . t)が設定されている)を一時的に表示状態(invisible=nil)にすることで解決しました。そんなことをして大丈夫なのか自信が無かったのですが、とりあえず動いています。最初は buffer-invisibility-specからoutlineを抜けば良いと思ったのですが、それだと他の非表示部分(リンクのパス部分など)が全て表示された状態で幅の計算をしてしまいます。テキストプロパティがどうであろうと、上に乗っかっているオーバーレイの非nilなinvisibleプロパティが優先されるようです。オーバーレイのinvisibleプロパティがoutlineである以上、その範囲内は全てinvisible=outlineであり、buffer-invisibility-specからoutlineを消した以上全て表示されてしまうのです。何はともあれ、この方法で解決して良かったです。ダメならそれこそ自分で幅の計算(というかもはや推測)をしなければいけないところでした。また、指定のピクセル幅を超えるテキスト位置を求める必要がありましたがそのような機能はどこにも無いため二分探索で何とかしました。

一応ピクセル単位での幅計算はオプションでデフォルト無効にしてあります。ちょっと重いような気もするので。

というわけでorg-modern下でもそれなりの見た目が実現出来ました。

2022-11-25-fix-phscroll-20221125.gif

私はこのプロジェクトがあまり良いものだとは思っていません。一応実用にはなるのですが、やり方はかなり強引ですし、同じ場所を幅の違う複数のウィンドウから見たら破綻するという根本的な問題も抱えています。理想的には、Emacsに折り返しを制御するような特殊なテキストプロパティを追加するのが良さそうに思えます。line-prefixやwrap-prefixと似たようなものです。いつかEmacsにそのような機能が追加されるのを夢見つつ、それまでのつなぎとして作っています。

2022-11-22 ,

Emacs Lisp要素へのリンクをorg-modeに追加する

(2024-01-16追記: エクスポートに対応したのを書きました)

Emacs Lispの関数や変数、フェイスの定義へリンクを張ろうと思ったら次のような方法くらいしか無いらしい。

- [[elisp:(find-function 'org-mode)]]
- [[file:c:/app-install-dir/emacs-28.2/share/emacs/28.2/lisp/org/org.el::(define-derived-mode org-mode outline-mode "Org"]]

参考: Org-mode link to function definition - Emacs Stack Exchange

ファイル名はバージョンによってパスが変わってしまう。elispリンクタイプは評価するかの確認が必要。

ということで自分で定義した方が良さそう。

(org-link-set-parameters
 "elisp-function"
 :follow (lambda (str) (find-function (intern str))))

(org-link-set-parameters
 "elisp-variable"
 :follow (lambda (str) (find-variable (intern str))))

(org-link-set-parameters
 "elisp-face"
 :follow (lambda (str) (find-face-definition (intern str))))
[[elisp-function:org-version]]

[[elisp-variable:org-version]]

[[elisp-face:org-todo]]
2022-11-19

diredに「戻る」機能を追加する

diredにディレクトリを「戻る」機能が無かったので追加してみました。

前提として、私はディレクトリを開くときに元のdiredバッファをkillするように改造して使っています。遙か昔Emacsを使い始めたときに真っ先に気になったことの一つがそれ。いつの間にかEmacsがdiredバッファだらけになっていてびっくりするわけです。他のEmacsユーザのことはほとんど知りませんが、多くの人が気になって直したのではないでしょうか。今日作業中に気がついたのですが、Emacs28からはdired-kill-when-opening-new-dired-bufferというカスタマイズ変数が追加されています。まさにそれを実現するための機能が長い時を経て追加されていました。

それでなぜ今になって戻る機能が欲しくなったかというと、新しいPCでシンボリックリンクを使ったからです。私は普段HOMEディレクトリをUSERPROFILE(C:/Users/名前/)とは別の場所に設定して使っています。C:/home/名前/のように。しかしそうするとUsersとhomeの使い分けが問題になってきます。私はUsersディレクトリはほとんど無視してhomeの中だけで過ごしてきました。そもそもWindows95系にはUsersなんてディレクトリは無かったはずです。古くからのユーザにはC:/の直下に好きなようにファイルを置いている人もまだいるかもしれません。それはともかく、私の使い方ではUsersとhomeが微妙に役割が被るケースがありました。その最たる物がdownloadsディレクトリです。私はこれまでUsersの下のディレクトリは使わずにC:/home/名前/downloadsというディレクトリを作って使っていました。しかし新しいPCをセットアップするたびにC:/Users/名前/Downloadsにファイルがダウンロードされてしまうわけです。ブラウザの設定をまだ変えていないので。ブラウザの設定を変えるのにも飽き飽きしてきましたし、エクスプローラで見たときにUsersの下のDownloadsディレクトリの方がアイコンが付いていて見た目が良く操作もしやすいという利点もあったので、 mklink /d C:\home\名前\downloads C:\Users\名前\Downloads でシンボリックリンクを張ってみたというわけです。個人的にはWindowsでシンボリックリングが欲しくなることというのはほとんど無いのでちょっと新鮮な気分でした。ちなみにシンボリックリンクを作るにはデフォルトでは管理者権限が必要みたいなのですが、Windowsを開発者モード(何だそりゃ)というのにすると管理者権限が無くても大丈夫になるようです。それでEmacsのdiredからC:/home/名前/downloadsディレクトリを開いてみると、C:/Users/名前/Downloadsが開きました。おおちゃんと対応しているじゃないかと気を良くして^を押して上のディレクトリに戻ろうとするとhome側では無くUsers側で上のディレクトリに移動してしまうわけです。原因の一端は find-file-visit-truename が t になっていることにありました。これがtだと開いた段階でシンボリックリンクの名前では無く、真のファイル名で開いてしまうわけです。nilにすればC:/home/名前/downloadsというパスでdiredが開くので、^を押したときにちゃんとC:/home/名前/に戻ります。しかし私は find-file-visit-truename を t に設定した覚えがありません。変数のドキュメントを見るとOriginal valueはnilだと書かれていますし実際files.elのdefcustomはnilです。探してみると、w32-fns.elの先頭付近でWindowsであればtに変更していました。8.3やlongnameを同一のバッファで開くというようなコメントがあります。今時8.3なんてお目にかかりませんしnilにしても問題ないような気がしましたが、念のためいじらないでおこうと思います。となるとシンボリックリンクの飛び先から戻るために最後に開いていたディレクトリに「戻る」機能が必要になるというわけです。ヤレヤレ!

HelpやInfoにも l で戻る機能がありますし、同じキーで戻れるようにしておけば直感的かもしれません。 l はdired-do-redisplayですが個人的には使っていません。 g を押してしまいますし。

既にあったコードも含めて次のようになりました。

(with-eval-after-load "dired"
  ;; 戻る機能を実現する
  
  (defvar-local my-dired-dir-history nil)

  (defmacro my-dired-dir-history-push (&rest body)
    (let ((new-hist (gensym))
          (result (gensym)))
      `(let ((,new-hist (cons (dired-current-directory) my-dired-dir-history))
             (,result (progn
                        ,@body))) ;;ここで新しいバッファを開く
         (setq-local my-dired-dir-history ,new-hist) ;;新しいバッファに履歴を持たせる
         ,result)))

  (defun my-dired-dir-history-back ()
    (interactive)
    ;; 存在しないディレクトリをスキップする。
    (while (and my-dired-dir-history
                (not (file-directory-p (car my-dired-dir-history))))
      (setq my-dired-dir-history (cdr my-dired-dir-history)))
    ;; 最近のディレクトリを開く。
    (when my-dired-dir-history
      (let ((last-dir (car my-dired-dir-history))
            (new-hist (cdr my-dired-dir-history)))
        (set-buffer-modified-p nil)
        (find-alternate-file last-dir)
        (setq-local my-dired-dir-history new-hist))))

  (define-key dired-mode-map "l" #'my-dired-dir-history-back) ;;dired-do-redisplayは個人的に使っていないのと(gを使ってしまう)、helpやinfoがlで戻るのでそれに合わせる。

  ;; aで開いたときに現在のディレクトリを履歴に記録する。

  (defun my-dired-find-alternate-file-for-record-dir-history (original-fun)
    (my-dired-dir-history-push
     (funcall original-fun)))
  (advice-add #'dired-find-alternate-file
              :around
              #'my-dired-find-alternate-file-for-record-dir-history)

  ;; ;; Emacs 28以降でdired-kill-when-opening-new-dired-bufferを使って
  ;; ;; e, f, ^でディレクトリを開いた場合に対応する。
  ;; (defun my-dired--find-file-for-record-dir-history (original-fun find-file-function file &rest args)
  ;;   (if (and (eq find-file-function #'find-alternate-file)
  ;;            (file-directory-p file))
  ;;       (my-dired-dir-history-push
  ;;        (apply original-fun find-file-function file args))
  ;;     (apply original-fun find-file-function file args)))
  ;; (when (and (fboundp 'dired--find-file)
  ;;            (boundp 'dired-kill-when-opening-new-dired-buffer)
  ;;            dired-kill-when-opening-new-dired-buffer)
  ;;   (advice-add #'dired--find-file
  ;;               :around
  ;;               #'my-dired--find-file-for-record-dir-history))
  ;; ↑動作未確認。
  ;; Emacs28以降であれば下の修正をせずに上の修正をしてdired-kill-when-opening-new-dired-bufferをtにすれば良い、はず。

  ;; 元々修正していたファイルを開く処理

  (defconst my-dired-open-desktop-extensions
    '(;;"pdf" <=use pdf-tools
      "xls" "xlsx" "docx" "vsd"
      "psd"
      "wav" "mp3" "aac" "au" "ogg" "flac"
      "mp4" "avi" "mpg" "mpeg"))
  (defun my-dired-w32-open ()
    (interactive)
    (w32-shell-execute "open" (dired-get-filename)))
  (defun my-dired-find-alternate-file ()
    (interactive)
    (cond
     ;; directoryはdired-find-alternate-file(aキー相当)で開く
     ((file-directory-p (dired-get-filename))
      (dired-find-alternate-file))
     ;; 一部の拡張子はw32-shell-executeで開く
     ((member (file-name-extension (dired-get-filename)) my-dired-open-desktop-extensions)
      (my-dired-w32-open))
     ;; emacsで開く
     (t
      (dired-find-file))))

  (define-key dired-mode-map "\C-m" 'my-dired-find-alternate-file) ;;C-mやRET

  ;; 元々修正していた上ディレクトリに移動する処理
  ;; (dired-up-directoryのコードをちょっと修正した物です)

  (defun my-dired-up-directory (&optional other-window)
    "Run dired on parent directory of current directory.
Find the parent directory either in this buffer or another buffer.
Creates a buffer if necessary."
    (interactive "P")
    (let* ((dir (dired-current-directory))
           (up (file-name-directory (directory-file-name dir))))
      (unless (equal dir up)
        (or (dired-goto-file (directory-file-name dir))
            ;; Only try dired-goto-subdir if buffer has more than one dir.
            (and (cdr dired-subdir-alist)
                 (dired-goto-subdir up))
            (progn
              (if other-window
                  (dired-other-window up)
                ;; ここから修正
                ;; 元は(dired up)
                ;; Emacs28からは(dired--find-possibly-alternative-file up)
                (my-dired-dir-history-push
                 (set-buffer-modified-p nil)
                 (find-alternate-file up))
                ;; ここまで修正
                )
              
              (dired-goto-file dir))))))

  (define-key dired-mode-map [delete] 'my-dired-up-directory) ;;Back Space
  (define-key dired-mode-map "^" 'my-dired-up-directory) ;;^

);;with-eval-after-load "dired"

dired-kill-when-opening-new-dired-bufferを使う方法に切り替えようかなとも思いましたが、たまにEmacs27以前をテストのために立ち上げることがあるのでしばらくは使わずにいようと思います。

HOMEをUSERPROFILEと同じにしてしまうという手も考えなくも無いんですけどね。C:/Users/名前/下の乱雑さを見ると気が引けてしまいます。整理していない(アプリが勝手にいじくるママにしている)からというのもあるのでしょうけど。