2024-02-15

Corfuの自動補完で候補の存在を伝える事と候補を選べるようにする事を分離する

前回の続き。

私が自動補完が煩わしいなと思う所は、補完候補が表示されると同時ににいくらかのキー割り当てが(候補選択のために)変更されてしまい、それが誤操作を誘発する点です。それはorg-modeの表で何かを入力した後にTABや矢印キーを押して別のセルへ移動しようとしたときかもしれません。はたまた普通の場所でどこかの行を修正して、下の行に移動し、RETを押して改行を追加しようとしたときかもしれません。そういったときに、突然出現した自動補完にキーを奪われ意図せず補完候補を選んでしまうわけです。

一方でそれでも自動補完が欲しいと思う所は、補完候補の存在に気が付かせてくれる点です。C-M-iで手動で補完候補を出すことも出来ますが、それはそこで補完できることを知っていないとできません。

自動補完は、候補の自動的な表示とユーザーの選択によって機能します。前者は欲しいのに後者は鬱陶しい。となればそれらを分離すれば良いと考えるのは自然でしょう。

つまり次のようになってくれれば良いわけです。

  1. 補完候補を見つけたらそれを自動でポップアップ表示する(しかし一切のキーを奪わず、候補の選択操作は出来ない)
  2. その状態で明示的にC-M-iを押すと候補の選択が出来るようになる(同時に最初の候補が選択されるもしくは唯一ある候補が入力される)

次のコードで出来ます。

(defvar-keymap my-corfu-auto-map
  :doc "Keymap used when popup is shown automatically."
  "C-g" #'corfu-quit)

(defvar my-corfu-in-auto-complete nil)

(defun my-corfu--auto-complete-deferred:around (oldfun &rest args)
  ;; 自動補完を試みるときに呼び出される
  (let ((my-corfu-in-auto-complete t))
    ;; 元の関数を呼び出す
    ;; 補完候補があるなら続けてsetup等が呼ばれる
    (apply oldfun args)))

(advice-add 'corfu--auto-complete-deferred :around #'my-corfu--auto-complete-deferred:around)

(defun my-corfu--setup:around (oldfun &rest args)
  (if my-corfu-in-auto-complete
      ;; 自動補完の時
      (progn
        (setf
         ;; 子フレームを半透明にする
         (alist-get 'alpha corfu--frame-parameters) 90
         ;; C-M-iを押せと表示する (2024-02-16追記) (2024-02-17修正: やっぱりtabではなくheaderを使う)(2024-02-18修正: やっぱりtabを使う。色が目立つから)
         (alist-get 'tab-line-format corfu--buffer-parameters) "   C-M-i:補完"
         ;; 最初の候補を選ばない
         corfu-preselect 'prompt)
        (let (;; キー割り当てを極力無くす
              (corfu-map my-corfu-auto-map))
          (apply oldfun args)))
    ;; 手動補完の時
    (setf
     ;; 子フレームを完全不透明にする
     (alist-get 'alpha corfu--frame-parameters) 100
     ;; C-M-iを押せと表示しない (2024-02-16追記) (2024-02-17修正: やっぱりtabではなくheaderを使う)(2024-02-18修正: やっぱりtabを使う。色が目立つから)
     (alist-get 'tab-line-format corfu--buffer-parameters) nil
     ;; 最初の候補を選ぶ
     corfu-preselect 'first)
    (apply oldfun args)))

(advice-add 'corfu--setup :around #'my-corfu--setup:around)

;; tab-line-heightを考慮して高さを増やす(2024-02-17追記)
(defun my-corfu--make-frame:around (oldfun frame x y width height buffer)
  (when (alist-get 'tab-line-format corfu--buffer-parameters)
    (cl-incf height (window-tab-line-height (frame-root-window frame))))
  (funcall oldfun frame x y width height buffer))

(advice-add 'corfu--make-frame :around #'my-corfu--make-frame:around)

補完候補が出ているときのキーマップは通常corfu-mapですが、自動補完の時にだけ使われるmy-corfu-auto-mapを定義しました。ポップアップを消すためのC-gだけ残して他のキー割り当てを全て取り除いています。これでもはや移動キーやTAB、RETを奪われることはありません。

Corfuのポップアップは基本的にcorfu--setupで始まりcorfu--teardownで終わるようです。自動補完の場合はcorfu--auto-complete-deferred経由でcorfu--setupが呼ばれるので、そのタイミングで各種変数を書き替えています。

選択操作ができない状態の時はポップアップを半透明で表示するようにしてみましたが、選択状態で分かるので特段必要では無かったかもしれません。「候補選択:C-M-i」などと一覧の一番下(上?)に表示すればより親切かもしれません(2024-02-16追記:そうしました)。

実際に使ってみると、最初は少し戸惑いますが慣れれば悪くないのかなとも思います。候補が出てるとこれまでの癖でついC-nを押してしまうというのはあるのですが……。しばらく使ってみないとよく分かりません。

(自動補完時に)候補を減らすのはもはや必要ないかもしれません。頻繁に候補を出されたところでキーが奪われるわけではありませんし。まぁ、ポップアップの表示自体が邪魔(視覚が奪われる)ということはあるかもしれませんが。その辺りも今後の調整ということで。

自動的に出現した補完候補(この時点でC-g以外のキーは通常通りの動作)
図1: 自動的に出現した補完候補(この時点でC-g以外のキーは通常通りの動作)
C-M-iを押して補完を開始したところ(この時点から候補選択等のキー操作ができる)
図2: C-M-iを押して補完を開始したところ(この時点から候補選択等のキー操作ができる)

(追記: 以前書いた設定corfu-mapのRETキーに独自の my-corfu-insert-or-newline という名前のコマンドを割り当てていましたが、正しくは corfu-my-insert-or-newline とすべきでした。C-M-iで手動補完を実行した後に素早くRETを押すと最初の補完候補が選ばれず単に改行されてしまっていました。なぜかというと、コマンド名がcorfu-で始まるかでupdateするかを判断している部分があったからです。なんてこった!)

(2024-02-18追記: 以前書いた設定はcorfu-mapを自動補完の時にも使うことが前提でしたが、今回の改良でcorfu-mapは手動補完専用になったので、設定を次のように書き替えました)

(with-eval-after-load "corfu"
  ;; 上の自動補完時にキーを奪わない設定が前提。
  ;; https://misohena.jp/blog/2024-02-15-separate-notification-and-selection-with-corfu-auto.html
  ;; 他にもorg-mode時に #+ や [[ で自動補完を開始する設定もしている。
  ;; https://misohena.jp/blog/2024-02-16-completion-in-org-mode.html

  ;; 候補リストの最初と最後を行き来できるようにする。
  (setq corfu-cycle t)
  ;; 自動的に補完候補を出す。
  (setq corfu-auto t)

  ;; 特殊な文字は決定と同時に挿入する。
  ;; https://github.com/minad/corfu/wiki#tab-and-go-completion が近い。
  ;; 特殊な文字はモードによって変わってくる。C++なら:や(も同様に処理したいだろう。
  ;; lispなら関数名の後にスペースや)で決定したい。他にも;とかも?
  (defun corfu-my-insert-RET () ;; corfu-で始まるかで動作が変わるところがある。 (savex C-M-i RETと素早く押したときに、RETがcorfu-で始まるコマンドだとupdateが走り正常に動作するが、my-corfu-だとそうならない。
    (interactive)
    (corfu-insert)
    (call-interactively 'newline));; インタラクティブじゃないとインデントされなかったりする。
  (defun corfu-my-insert-self ()
    (interactive)
    (let ((ch last-command-event))
      (when (characterp ch)
        ;; (2024-03-03追記:その文字を含んだ候補があるなら補完を終了しないようにした)
        (when (and (>= corfu--index 0)
                   (not (seq-some (lambda (str) (seq-contains-p str ch))
                                  corfu--candidates)))
          (corfu-insert))
        (insert-char ch))))
  (define-key corfu-map (kbd "RET") 'corfu-my-insert-RET)
  (define-key corfu-map (kbd "SPC") #'corfu-my-insert-self)
  (define-key corfu-map (kbd ")") #'corfu-my-insert-self)
  (define-key corfu-map (kbd "]") #'corfu-my-insert-self)
  (define-key corfu-map (kbd "}") #'corfu-my-insert-self)

  ;; その他手動補完時のキー設定
  (define-key corfu-map (kbd "M-TAB") #'corfu-complete) ;;M-TABをTABと同じにすることでM-TAB二回(C-M-i二回)で一つ目の候補を選択出来るようになる。C-M-i C-iと押すより楽
  )

  ;; Corfuの候補リストにアイコンを表示する。
  (when (locate-library "kind-icon")
    (setq kind-icon-default-face 'corfu-default)
    (add-to-list 'corfu-margin-formatters #'kind-icon-margin-formatter))

  ;; lsp-modeの設定はeglotへ移行して使わなくなったので削除。
  )