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2024-01-28 ,

org-modeでインライン画像化する画像形式を限定する

以前Emacsが扱える画像形式をちゃんと設定して多種多様な画像を表示できるようにしたのですが(「画像形式とimage-converterの設定」のあたり)、その副作用でorg-mode内で余計なファイルリンクまでインライン画像表示されるようになってしまいました。

例えばmp3や動画ファイル、pdfに至るまでorg-modeの中でインライン画像表示されるようになってしまったのです。例えばTODOリスト内にローカルにあるメディアファイルへのリンクを書いてそれを読む(もしくは聞く)ようにメモを書いたとして、そのリンクがインライン画像表示されてしまうわけです。「image-diredでmp3カバー画像を表示する」のようにImage Dired内でサムネイルとして表示される分には全く構わないわけですが、org-mode内でいちいち全てのリンクが画像として表示されてはたまりません。

原因

インライン画像化される画像形式は、org-display-inline-images関数から呼び出されるimage-file-name-regexp関数が返す正規表現によって決まっています。現在私の所でこの関数を呼び出すと……

(image-file-name-regexp)
\.\(3\(?:G[2P]\|g[2p]\)\|A\(?:I\|PNG\|RT\|VIF?\)\|BMP\|C\(?:R[23]\|UR\)\|D\(?:C[MR]\|DS\|NG\|PX\|XT[15]\)\|E\(?:P\(?:DF\|S[FI]\|T[23]\|[IST]\)\|RF\)\|F\(?:ITS\|L\(?:32\|IF\|V\)\|TS\)\|GIF\|H\(?:DR\|EI[CF]\|RZ\)\|I\(?:C\(?:ON\|[BO]\)\|IQ\|PL\)\|J\(?:2[CK]\|B\(?:I?G\)\|N[GX]\|P\(?:EG\|[2CEGMST]\)\)\|K\(?:25\|DC\)\|M\(?:2V\|4[AV]\|EF\|IFF\|KV\|NG\|O\(?:NO\|V\)\|P\(?:EG\|[34CGO]\)\|RW\|TV\|VG\)\|N\(?:EF\|RW\)\|O\(?:RF\|T[BF]\)\|P\(?:AM\|BM\|C\(?:DS\|[DLTX]\)\|DFA?\|EF\|F[ABM]\|G[MX]\|HM\|I\(?:C\(?:ON\|T\)\|X\)\|JPEG\|N[GM]\|PM\|S[BD]?\|TIF\|WP\)\|QOI\|R\(?:A[FS]\|GF\|L[AE]\|MF\|W2\)\|S\(?:FW\|VGZ?\)\|T\(?:GA\|I\(?:FF\(?:64\)?\|[FM]\)\|M2\|T[CF]\)\|V\(?:DA\|I\(?:CAR\|FF\|PS\)\|ST\)\|W\(?:BMP\|EB[MP]\|MV\|PG\)\|X\(?:3F\|BM\|CF\|P[MS]\|V\)\|a\(?:i\|png\|rt\|vif?\)\|bmp\|c\(?:r[23]\|ur\)\|d\(?:c[mr]\|ds\|ng\|px\|xt[15]\)\|e\(?:p\(?:df\|s[fi]\|t[23]\|[ist]\)\|rf\)\|f\(?:its\|l\(?:32\|if\|v\)\|ts\)\|gif\|h\(?:dr\|ei[cf]\|rz\)\|i\(?:c\(?:on\|[bo]\)\|iq\|pl\)\|j\(?:2[ck]\|b\(?:i?g\)\|n[gx]\|p\(?:eg\|[2cegmst]\)\)\|k\(?:25\|dc\)\|m\(?:2v\|4[av]\|ef\|iff\|kv\|ng\|o\(?:no\|v\)\|p\(?:eg\|[34cgo]\)\|rw\|tv\|vg\)\|n\(?:ef\|rw\)\|o\(?:rf\|t[bf]\)\|p\(?:am\|bm\|c\(?:ds\|[dltx]\)\|dfa?\|ef\|f[abm]\|g[mx]\|hm\|i\(?:c\(?:on\|t\)\|x\)\|jpeg\|n[gm]\|pm\|s[bd]?\|tif\|wp\)\|qoi\|r\(?:a[fs]\|gf\|l[ae]\|mf\|w2\)\|s\(?:fw\|vgz?\)\|t\(?:ga\|i\(?:ff\(?:64\)?\|[fm]\)\|m2\|t[cf]\)\|v\(?:da\|i\(?:car\|ff\|ps\)\|st\)\|w\(?:bmp\|eb[mp]\|mv\|pg\)\|x\(?:3f\|bm\|cf\|p[ms]\|v\)\)\'

といった具合なので、そりゃ沢山の形式がインライン画像化されてしまうわけです。

手動でインライン画像表示をしていたらあまり気にならないのかもしれませんが、私はorg-flyimageで自動的にインライン画像表示をさせているので意図しないものまで全て即事に表示されてしまうわけです。

修正方法

これを修正するとして、image-file-name-regexp関数が返す内容を修正すべきでしょうか。それともorg-mode側を修正すべきでしょうか。

image-file-name-regexp関数を修正してしまうと他の部分で画像が表示されなくなってしまうことが予想されます。また、そもそもインライン画像化はエクスポートしたときに画像化される形式に限定すべきでしょう。

org-flyimageの自動表示対象を変更できるようにするという手もありますが(必要なら手動で表示する余地を残す)、そこまでは必要ないでしょう。

というわけでorg-display-inline-images関数の挙動を書き替えれば良いのですが、私の場合以前「org-inline-image-fixのEmacs 29対応」に書いたような経緯でこの関数を完全に置き換えてしまっているので、そちらを修正することになります。org-display-inline-images関数は外から手を加えるのが難しい構造をしていて、色々強引な手を使った挙げ句Emacs29になったタイミングでより良い関数に置き換えたのでした。

Add ability to customize displayed image file names · misohena/org-inline-image-fix@07856aa

上のコミットでorg-better-inline-images-image-file-name-regexpというカスタマイズ変数を追加し、画像化するか判定するための正規表現を変更できるようにしました。設定できる値は、nil(従来通りimage-file-name-regexp関数を使う)、文字列(正規表現)、関数(image-file-name-regexp関数の代わりに正規表現を返す)、拡張子のリストに対応しています。

本当は画像としてエクスポートするファイル名かどうか(org-export-default-inline-image-ruleorg-html-inline-image-rules)を基準にしようとも思ったのですが、tifやxpm等微妙な形式もありますし、ox.elやox-html.el等を必ずロードしなければならないのでやめておきました。数も少ないですし、拡張子のリストが指定出来ればそれで十分でしょう。

これで私はインライン画像表示する形式を、gif、jpg、jpeg、png、svg、webpに限定しました。必要な形式があったらその都度追加するということで。

org-better-inline-images-image-file-name-pというカスタマイズ変数も追加しておきましたが不要でした。

Org 9.6から現在までのインライン画像表示機能に対する変更点の確認

ついでに最近のインライン画像表示機能に対する変更点も確認しておきました。関数を置き換えた以上、本家の方に加えられた変更に目を光らせていなければなりません。

これらはおそらく次のリリース(9.7?)に含まれることになるのでしょう。

注目はインライン画像の幅を制限する機能(org-image-max-width変数)でしょう。待ちわびていた人もいるのではないでしょうか。今のところ高さの制限(org-image-max-height?)は無いように見えます。なので私の改良はまだ意義があるということで。

インライン画像のalign(右寄せ、中央寄せ)も実装されたようです。 #+ATTR_HTML: :align center 等の指定やグローバルオプション(org-image-align)の指定が反映されるようです。個人的には使う予定はありません。

org-elementにいくつか便利な関数が追加されたり、引数の指定方法が改善されたりしたので、それに伴う修正がいくつか入っていました。

環境変数の展開は、そもそもそんなことができること自体知りませんでした。試しに [[file:$APPDATA/Microsoft/Windows/Start Menu/Programs]] と書いたらちゃんとスタートメニューにアクセスできました。私はCorfuでファイル名の補完を有効にしているのですが、 file:$ と打った瞬間に全環境変数が補完候補として出てきます。環境変数を入れた後も、ちゃんとそれを展開した後のディレクトリにあるファイルを補完候補として出してきます!

一部のものは私の改造版にも反映しておきました。残りは9.7が出てからにします。

2024-01-27

複数行にわたるコメントの中のS式を評価する

Emacs Lispで次のようなコードを書いたとします。

;; 使用例:
;; (my-hogehoge-function
;;   1
;;   2
;;   3)

(defun my-hogehoge-function (a b c)
  (+ a b c))

複数行あるコメントの最後、 ) の直後でeval-last-sexp (C-x C-e)を実行すると……

Debugger entered--Lisp error: (scan-error "Unbalanced parentheses" 313 1)

などと出てコメント内のS式を評価できません。

いちいちuncommentしてから評価して元に戻すのも面倒です。

Googleで検索して見ると kensanata/eval-sexp-in-comments: eval sexp in comments, for Emacs というのを見つけました。ソースコードを見るとwith-temp-bufferで別バッファへ移してからコメントを外し、その後eval-last-sexpを実行していました。それだと現在のバッファの中で評価したい場合に困ります。

eval-last-sexpの中身を見てみると、elisp--preceding-sexpという関数でポイントの前にあるS式テキストをlispオブジェクトの形で取り出してから、評価しているようでした。

なので、このelisp--preceding-sexpに細工をしてコメントの中にいるときは別バッファにコピーしてコメントを外し、そこでelisp--preceding-sexpを呼び出してS式を返せば良いと考えました。

;; my-elisp.el

(defun my-elisp-beginning-of-continuous-comments ()
  "現在の連続コメントの先頭を返す。

連続コメントとは、連続改行(空行)を除く空白文字のみで区切られた複
数のコメントのまとまりを指す。そのまとまりの最初の;の位置を返す。

例:
123 ;; line-1
    ;; line-2

    ;; line-3

「line-3」の末尾の場合「;; line-3」の先頭、「line-2」の末尾の場合
「;; line-1」の先頭の位置を返す。

各行;;の先頭はコメントに含まれない。

現在のポイントがコメント内ではない場合nilを返す。

文字列の中の;;には反応しない。
例:
\"
;; line-1 ←ここで実行してもnilを返す。コメントでは無く文字列の中なので。
\"

(以下追記)
同じコメントスタートに限定するかは迷うところ。
 ;; (+
;;     2
;;;    3)
みたいなのも現状では受け入れる。

    ;; line-1
123 ;; line-2
    ;; line-3
みたいなのは無理(;; line-2が先頭になる)。
対応できないことは無いだろうけど
そもそもコメントの前に何かある場合も対応する必要があるかは疑問。

理想的にはコメント開始の水平位置と;の数が揃っている連続行を
抽出すべきなのだと思う。"
  (cond
   ((derived-mode-p 'emacs-lisp-mode)
    (save-excursion
      (let (beginning-of-comment)
        (while (and (comment-beginning)
                    (progn
                      (skip-chars-backward " \t")
                      (skip-chars-backward ";")
                      (setq beginning-of-comment (point))
                      (skip-chars-backward " \t")
                      (bolp))
                    (not (bobp)))
          (backward-char))
        beginning-of-comment)))
   (t
    (save-excursion
      ;; TODO: 現在のメジャーモードでのコメントが先頭にある場合はそれも無視すべき?
      ;; TODO: 「123 ;; (if」から複数行に続く形式に対応していない。123の部分にコメント以外のセミコロン(文字列等)があることを考慮しなければならない。
      (let (beginning-of-comment)
        (forward-line 0)
        (while (looking-at "[ \t]*;+[ \t]*")
          (setq beginning-of-comment (match-end 0))
          (forward-line -1))
        beginning-of-comment)))))

(defun my-elisp-sexp-in-comment (beg end)
  "BEGからENDの中にあるコメントの中にあるS式を返す。"
  (when (and beg end (< beg end))
    (let ((original-buf (current-buffer)))
      (with-temp-buffer
        (emacs-lisp-mode)
        (insert-buffer-substring original-buf beg end)
        (goto-char (point-min))
        ;; ↓これだと最終行のコメントが空でかつEOBの時になぜか「Beginning of buffer」のエラーが出る。
        ;; (uncomment-region (point-min) (point-max))
        (while (re-search-forward "^\\s-*;+" nil t)
          (replace-match "")
          ;; 次の行へ(現在の行にある残りのコメント中コメントは残す)。
          (forward-line 1))
        (goto-char (point-max))
        ;; 1段階コメントを外した後の状態からS式を取り出す。
        ;; コメントの中にコメントがある場合は、
        ;; 再帰的にこの関数が呼び出されることもある。
        ;; ;; ;; (+
        ;; ;; ;;  ;; コメント
        ;; ;; ;;  1 2)
        ;; みたいなのも正しく処理する。
        (elisp--preceding-sexp)))))

(defun my-elisp-preceding-sexp-in-comment ()
  "ポイントがコメント内にあるとき、複数行にわたるコメントを考慮して
ポイントの直前にあるS式を読み取る。"
  (my-elisp-sexp-in-comment (my-elisp-beginning-of-continuous-comments) (point)))

(defun my-elisp-preceding-sexp-around (orig-fun &rest args)
  "elisp--preceding-sexpの:around advice。"
  (let ((end (point))
        (beg (my-elisp-beginning-of-continuous-comments)))
    (if (and beg (< beg end))
        (my-elisp-sexp-in-comment beg end)
      (apply orig-fun args))))

(provide 'my-elisp)

(2024-01-30修正: コメントの中のコメントをうまく処理できるようにしました)

設定方法:

(when (version<= "25.1" emacs-version) ;; Require #'elisp--preceding-sexp
  (autoload 'my-elisp-preceding-sexp-around "my-elisp")
  (advice-add 'elisp--preceding-sexp :around 'my-elisp-preceding-sexp-around))

これで無事複数行にわたるコメント内のS式を評価できるようになりました。

ただ、メジャーモードがemacs-lisp-modeではない場合のことも考えると、少々煮え切らないコードになってしまいました。例えばorg-modeのソースコードブロックの中にコメントがあって、その中のS式を評価したい場合など。C言語やシェルスクリプトのコメント(//や#)の中に複数行にわたってS式を書いてそれを評価したい、なんてケースはあるでしょうか?(実際、別言語のソースコードのコメントの中にelispのコードを書いて、その別言語のコードを生成したことは度々あった気がします) 考え出すと切りがないです。文字列などクォートされたセミコロンを考慮しなければならないので単純な正規表現で処理するのもためらわれたりと色々面倒なところもありました。

2024-01-26

プロパティ一覧編集widgetを作る(Emacs Widget Libraryについて調べる3)

前回の続き。

今回は複数のプロパティを保持するリスト(plistなりalistなり)を編集するwidgetを作成します。

すでにplistやalistという名前のwidgetは定義されているのですが、それの見た目はこんな感じです。

org-link-parametersをカスタマイズするところ(plistのalist)
図1: org-link-parametersをカスタマイズするところ(plistのalist)

違う。そうじゃないんだ。

やりたいことに一番近いのはfaceをカスタマイズする画面です。

customize-faceの画面
図2: customize-faceの画面

つまり、既に決まっている固定のプロパティ種類があり、その値の型もプロパティ種類によって決まっているような状況です。

プロパティの省略も可能で、省略した場合は何らかのデフォルト値が使われるといった具合です。

このfaceをカスタマイズするUIはcus-edit.el内にcustom-face-editという名前のwidgetとして定義されています。Emacs 29.2時点での定義は次の通りです。

(define-widget 'custom-face-edit 'checklist
  "Widget for editing face attributes.
The following properties have special meanings for this widget:

:value is a plist of face attributes.

:default-face-attributes, if non-nil, is a plist of defaults for
face attributes (as specified by a `default' defface entry)."
  :format "%v"
  :extra-offset 3
  :button-args '(:help-echo "Control whether this attribute has any effect.")
  :value-to-internal 'custom-face-edit-fix-value
  :match (lambda (widget value)
           (widget-checklist-match widget
                                   (custom-face-edit-fix-value widget value)))
  :value-create 'custom-face-edit-value-create
  :convert-widget 'custom-face-edit-convert-widget
  :args (mapcar (lambda (att)
                  (list 'group :inline t
                        :format "%v"
                        :sibling-args (widget-get (nth 1 att) :sibling-args)
                        (list 'const :format "" :value (nth 0 att))
                        (nth 1 att)))
                custom-face-attributes))

:value-to-internal:match の部分にはcustom-face-edit-fix-value関数が使われていますが、これはface属性の古い書き方を新しい書き方に直すためのものなので、ここでは無視します。 :extra-offset 3 はwidget先頭に追加するスペース、 :button-args ... はヘルプエコー、 :format "%v" は単にタグ等を消して値部分だけ表示させる指定なので、あまり重要ではありません。 :value-createconvert-widget:args の三つが重要になります。

まずdefine-widgetの第二引数CLASSはchecklistとなっています。これは派生元となるいわゆる基本クラスで、custom-face-editはchecklistの性質を受け継ぎます。

checklistは複数の子widgetの中からいくつかを選ぶようなwidgetです。結果の値は選ばれた子widgetの値だけが含まれるリストになります。例えば次のようなコードを実行して:

(progn
  (pop-to-buffer (generate-new-buffer "*Widget Example*"))
  (widget-create 'checklist
                 :value '("Second" t) ;;初期値
                 :notify (lambda (widget &rest _)
                           (message "通知 value=%s" (widget-value widget)))
                 ;;以下args
                 '(const "First")
                 '(const "Second")
                 '(boolean :on "有効" :off "無効")
                 '(number :value 123))
  (use-local-map widget-keymap)
  (widget-setup))

1番目と4番目のチェックボックスのみを有効にしたら結果は ("First" 123) になります。

faceのカスタマイズではチェックボックスをoffにした部分は結果のplistに含まれないようにしたいので、checklistから派生しているのだと思います。

次に :value-create に指定されたcustom-face-edit-value-create関数を見てみましょう(日本語コメントは私が追記)。

(defun custom-face-edit-value-create (widget)
  (let* ((alist (widget-checklist-match-find
                 widget (widget-get widget :value)))
         (args  (widget-get widget :args))
         (show-all (widget-get widget :show-all-attributes))
         (buttons  (widget-get widget :buttons))
         (defaults (widget-checklist-match-find
                    widget
                    (widget-get widget :default-face-attributes)))
         entry)
    ;; 改行と空白の挿入
    (unless (looking-back "^ *" (line-beginning-position))
      (insert ?\n))
    (insert-char ?\s (widget-get widget :extra-offset)) ;;注意:nilのとき1文字挿入してしまう。バグ? 仕様?
    ;; 値部分の挿入
    (if (or alist defaults show-all)
        (dolist (prop args)
          (setq entry (or (assq prop alist)
                          (assq prop defaults)))
          (if (or entry show-all)
              (widget-checklist-add-item widget prop entry)))
      (insert (propertize "-- Empty face --" 'face 'shadow) ?\n))
    ;; 未使用属性を隠す/表示するボタン
    (let ((indent (widget-get widget :indent)))
      (if indent (insert-char ?\s (widget-get widget :indent))))
    (push (widget-create-child-and-convert
           widget 'visibility
           :help-echo "Show or hide all face attributes."
           :button-face 'custom-visibility
           :pressed-face 'custom-visibility
           :mouse-face 'highlight
           :on "Hide Unused Attributes"    :off "Show All Attributes"
           :on-glyph nil :off-glyph nil
           :always-active t
           :action 'custom-face-edit-value-visibility-action
           show-all)
          buttons)
    (insert ?\n)
    ;; ボタンと子供達を記録
    (widget-put widget :buttons buttons)
    (widget-put widget :children (nreverse (widget-get widget :children)))))

この部分は :format の %v 部分を処理するときに呼び出される関数です。

実はこの部分はcheckboxの :value-create (widget-checklist-value-create)と本質的には大差ありません。違うところと言えば、未使用の属性を隠したり表示したりするボタンを追加しているくらいです。それと :default-face-attributes という指定の処理があるのですがとりあえず置いておきます。

次に :convert-widget に指定されたcustom-face-edit-convert-widget関数

(defun custom-face-edit-convert-widget (widget)
  "Convert :args as widget types in WIDGET."
  (widget-put
   widget
   :args (mapcar (lambda (arg)
                   (widget-convert arg
                                   :deactivate 'custom-face-edit-deactivate
                                   :activate 'custom-face-edit-activate
                                   :delete 'custom-face-edit-delete))
                 (widget-get widget :args)))
  widget)

この部分はwidget-createでwidgetオブジェクトを作成する際に呼び出されるいわばコンストラクタのようなもので完全に理解するにはwidget-createwidget-convertの処理を詳しく知る必要があるのですが、大ざっぱに言えば全ての子widgetに対して :deactivate:activate:delete のプロパティを強制的に追加しています。それによって、チェックボックスがON/OFFされて子widgetがactive、inactiveになったときの処理やwidgetを削除するときの処理を書き替えています。custom-face-editでは見た目を色々変えているので必要になります。あまり詳しく説明する必要は無さそうでしょうか。

そして最後の :args の部分。

  :args (mapcar (lambda (att)
                  (list 'group :inline t
                        :format "%v"
                        :sibling-args (widget-get (nth 1 att) :sibling-args)
                        (list 'const :format "" :value (nth 0 att))
                        (nth 1 att)))
                custom-face-attributes)

これはチェックリストの項目を生成する部分です。

custom-face-attributesという変数にface属性の一覧があるので、そこからmapcarで変換します。custom-face-attributesの各要素は一つのface属性に関する情報を持つリストです。その一つ目の要素は属性キーワード(:family とか :width とか)です。二つ目はその属性を編集するためのwidget型です。三つ目以降もあるのですがここで使うのはそこまでです。mapcar部分を実際に評価してみると次のようになります。

(
 (group :inline t :format "%v" :sibling-args nil (const :format "" :value :family) (string :tag "Font Family" :help-echo "Font family or fontset alias name."))
 (group :inline t :format "%v" :sibling-args nil (const :format "" :value :foundry) (string :tag "Font Foundry" :help-echo "Font foundry name."))
 (group :inline t :format "%v" :sibling-args nil (const :format "" :value :width)
        (choice :tag "Width" :help-echo "Font width." :value normal (const :tag "compressed" condensed) (const :tag "condensed" condensed) ...))
 ...
)

つまり、各項目は (group (const :family) string) やら (group (const :width) (choice ...)) などといったgroup widgetになります。

ここで注目すべきは :inline t という指定です。 :inline というのは決して一つの行内のwidgetという意味ではありません。普通のgroupだと結果の値は (:family "Arial") のようなリストになるので全体としては ((:family "Arial") (:width condensed)) のようになりplistにもalistにもなりません。そこで :inline t を指定すると子の結果が親のリストの中に展開されて (:family "Arial" :width condensed) という形になり、めでたくplistになるわけです。

ちなみにこのgroupをconsにしてやると結果をplistではなくalistにできます。ただし、別の所に少々バグというか問題があってエラーが発生する場合があり、そこを修正してやる必要があります。

以上を踏まえて、決まった型のplistやalistを編集するより汎用的なwidgetを作成し edraw-widget.el にまとめました。これを使うと例えば次のようにalistを編集するwidgetを作成できます。

(progn
  (require 'edraw-widget)
  (pop-to-buffer (generate-new-buffer "*Widget Example*"))
  (widget-create 'edraw-attribute-alist
                 :tag "Props"
                 :format "%v"
                 :notify
                 (lambda (w &rest _) (message "%s" (prin1-to-string (widget-value w))))
                 ;; :greedy nil ←未知の値の扱いに関わる(デフォルトはtにしてある)
                 :value '((stroke-width . 123.45) (stroke . "red") (unknown . "uval") (fill . "green"))
                 '(fill
                   (string :tag "Fill"))
                 '(stroke
                   (string :tag "Stroke"))
                 '(stroke-width
                   (number :tag "Stroke Width"))
                 '(stroke-join
                   (choice :tag "Stroke Join"
                           :value "miter"
                           (const "miter")
                           (const "round")
                           (const "bevel"))))
  (use-local-map widget-keymap)
  (widget-setup))

defcustomの:typeに指定することも出来ます。

(require 'edraw-widget)
(defcustom my-hogehoge-properties
  '((stroke-width . 123.45) (stroke . "red") (fill . "green"))
  "Hoge Hoge no Properties."
  :type '(edraw-attribute-alist
          :tag "My Hogehoge Properties"
          (fill
           (string :tag "Fill"))
          (stroke
           (string :tag "Stroke"))
          (stroke-width
           (number :tag "Stroke Width"))
          (stroke-join
           (choice :tag "Stroke Join"
                   :value "miter"
                   (const "miter")
                   (const "round")
                   (const "bevel")))))
defcustomでedraw-attribute-alistを使ってみたときの見た目
図3: defcustomでedraw-attribute-alistを使ってみたときの見た目

未知のプロパティが現れたときの処理はもう少し改善する余地があると思います。末尾に任意のプロパティとマッチするrepeatを加えてみたりもしたのですが、続く既知のプロパティまで巻き込んでしまうためうまく行きませんでした。マッチングのコードを修正する必要がありそうです。

制作の過程で色々ハマリどころがあって(inactiveなconsとcheckboxの通知タイミング、未指定のextra-offset、等)それについても書いておきたいのですが、長くなるので止めておきます。