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2021-01-31

Emacs Lispから音を鳴らす

ふとEmacs Lispマニュアルの Sound Output のところが目に入ったので試してみました。サウンドまわりは大昔に試してあまり良くなかった記憶がありますがその後どれだけ改善されたかな。

マニュアルを読んでみると (play-sound '(sound :file "ファイルへのパス"))(play-sound '(sound :data "サウンドデータ")) で鳴るみたいです。

試しにサイン波でも生成して鳴らしてみましょうか。

対応形式は.wav(RIFF)または.auと書いてあります。.auの方がヘッダーがシンプルなのでそれにしましょう。

44.1KHzモノラルの16-bit PCMのヘッダーは文字列にすると ".snd\x00\x00\x00\x18\xff\xff\xff\xff\x00\x00\x00\x03\x00\x00\xac\x44\x00\x00\x00\x01" の24バイトですね(長さは不明ffffffffとしてあります)。各要素はビッグエンディアンな32-bit整数です。

16-bit PCMの各要素は負号付き整数みたいですね。-32767~0~32768。

うーん、どうしましょう。文字列バッファを先に確保して、そこにバイト列を埋めていく方が速度的に良さそうでしょうか? (適当に文字列結合しまくる方が作るのは楽そうですが)

ひとまず16-bit, 32-bit整数を文字列化する関数を作り……

(defun my-snd-aset-i32 (bytearray index x)
  (aset bytearray index (logand 255 (ash x -24)))
  (aset bytearray (+ index 1) (logand 255 (ash x -16)))
  (aset bytearray (+ index 2) (logand 255 (ash x -8)))
  (aset bytearray (+ index 3) (logand 255 x)))

(defun my-snd-aset-i16 (bytearray index x)
  (aset bytearray index (logand 255 (ash x -8)))
  (aset bytearray (+ index 1) (logand 255 x)))

サイン波を生成する関数を作り……

(defconst my-snd-byte-size-i16 2)
(defconst my-snd-amplitude-i16 32767)

(defun my-snd-aset-sin-wave (dst-buffer dst-index num-samples wavelength)
  (let ((2pi/wavelength (/ (* 2 pi) wavelength))
        (i 0))
    (while (< i num-samples)
      (my-snd-aset-i16 dst-buffer dst-index
                       (truncate (* my-snd-amplitude-i16
                                    ;;周期の誤差をどこまで許容するかよく分からないよね
                                    (sin (* i 2pi/wavelength)))))
      (setq dst-index (+ dst-index my-snd-byte-size-i16))
      (setq i (1+ i))))
  dst-buffer)

試しに440Hzのサイン波を含むauデータを生成する関数を作る。

(defun my-snd-generate-au-sin-wave-440hz-1sec ()
  (let* ((samples-per-sec 44100)
         (seconds 1)
         (num-samples (* seconds samples-per-sec))
         (data-size (* my-snd-byte-size-i16 num-samples))
         (data (make-string (+ 24 data-size) 0)))
    ;; header
    (my-snd-aset-i32 data 0 #x2e736e64)
    (my-snd-aset-i32 data 4 24) ;;Data offset
    (my-snd-aset-i32 data 8 data-size)
    (my-snd-aset-i32 data 12 3) ;;16-bit linear PCM
    (my-snd-aset-i32 data 16 samples-per-sec)
    (my-snd-aset-i32 data 20 1) ;;Channels
    ;; data
    (my-snd-aset-sin-wave data 24 num-samples (/ samples-per-sec 440.0))

    data))

鳴らしてみましょぅ。

(play-sound (list 'sound :data (string-as-unibyte ;;string-as-unibyte必要?
                                (my-snd-generate-au-sin-wave-440hz-1sec))))

あれ、結果は (error "Invalid sound specification") だって。

おかしいなデータが壊れているのかな。試しにファイルに書き出してみる。

(with-temp-file "~/tmp/sin440.au"
  (set-buffer-file-coding-system 'no-conversion)
  (insert (string-as-unibyte (my-snd-generate-au-sin-wave-440hz-1sec))))

プレイヤーで鳴らしたら「ポー」っとちゃんと鳴ります。

それならこのファイルをplay-soundで鳴らしてみる。

(play-sound '(sound :file "~/tmp/sin440.au"))

あれ鳴らない、と思ったらプレイヤーで開いていたからでした。プレイヤーを閉じたらEmacsからちゃんと鳴りました。

play-sound関数はsubr.elにあって、Emacsのサウンドサポートを確認してからplay-sound-internal関数を呼び出しています。play-sound-internal関数はsound.cにあって、最初の方でparse_sound関数を呼び出しています。parse_sound関数を見ると……

#else /* WINDOWSNT */
  /*
    Data is not supported in Windows.  Therefore a
    File name MUST be supplied.
  */
  if (!STRINGP (attrs[SOUND_FILE]))
    {
      return 0;
    }
#endif /* WINDOWSNT */

Windowsでは :data をサポートしていないんだって!


そういえば昔Emacsから音を鳴らしたくて↓こういうのを作ったのでした。

これは何万個もある音声ファイルをテキストファイルと付き合わせて確認する作業で活躍したのでした。今でも動くのかは不明。

2021-01-02 , ,

org-mode文書の中に囲碁の碁盤を埋め込む

Emacsの中で囲碁の棋譜(SGF)を編集するツールを作りました。

2020-01-02-el-igo-screenshot.gif

この通り、org-mode文書の中にSGF形式の棋譜を埋め込んで編集できます。エクスポートも可能。この文書自体org-modeで書いているのでほらこの通り(隅の七目)。

作ったのは碁の勉強をするにあたって普段使っているorg-modeでノートが取れたら便利そうだなと思ったことがきっかけです。

ちょうど先日EmacsでのSVG使用例を見かけてもっと自由に使っていいんだと感銘を受けたところでした。

SVGといえば少し前にJavaScriptでSVGを使った碁盤を作ったところだったので、SVGでの碁盤の表現方法はすでに分かっていました。なので基本的な考え方はこれを踏襲してEmacs Lisp上で実装し直すことにしました。

最近書いていたのはそのための要素技術なのでした。

思いのほかよく出来て、機能的にも内部構造的にもJavaScript版より良くなった気がします。

私は以前からEmacsやorg-modeにはもっとビジュアルで埋め込まれた要素が沢山あって良いと思っていたので迷わずorg-mode文書の中に碁盤を埋め込んで表示してビジュアルに編集できる仕様を思いつきました。

最初はソースブロック(#+begin_src sgf ~ #+end_src)を盤面のオーバーレイに置き換えてみたのですがソースブロックは評価するとかしないとか結果が何だとか色々としっくり来ないところが多かったので(棋譜を評価した結果って何!?)最終的に専用の特殊ブロック(#+begin_igo ~ #+end_igo)を盤面にすることにしました。

みんなもっと自分の好きなものを埋め込みましょう。私が音楽が好きだったら譜面入力インタフェースを作成することでしょう。簡単な作図くらいorg-modeの中で完結しても罰は当たらないと思いますよ。XWidgets? 日和ってんじゃねーよ! とはいえ現状のSVG一本槍では複雑な用途には厳しいものがありますね。更新速度と当たり判定的に。

2020-12-19 ,

個別のorg-modeファイルにエクスポート時のフィルターを設定する

Defining filters for individual files(個別のファイルにフィルタを定義する)に書かれている例を試してみました。

#+BIND: org-export-filter-timestamp-functions (tmp-f-timestamp)
#+BIND: org-export-filter-strike-through-functions (tmp-f-strike-through)
#+BEGIN_SRC emacs-lisp :exports results :results none
  (defun tmp-f-timestamp (s backend info)
    (replace-regexp-in-string "&[lg]t;\\|[][]" "" s))
  (defun tmp-f-strike-through (s backend info) "")
#+END_SRC

time stamp [2020-12-19 Sat 14:06]

abc +def+ ghi

この例では二つのフィルタ関数を作成しています。一つはタイムスタンプのブラケット([]や<>)を消去する tmp-f-timestamp 関数、もう一つは取り消し線のテキストをまるまる消去する tmp-f-strike-through 関数です。一般的にフィルタ関数は、引数sの文字列(バックエンドによって変換済みの文字列)を再加工して返すことになっています。

この二つの関数をソースブロック( #+BEGIN_SRC emacs-lisp#+END_SRC )内に書くことでエクスポートするたびに評価させ関数を定義しています。ヘッダーオプション :exports results :results: none の指定によって、エクスポートするたびに毎回評価させつつ実際には何も(リスティングや結果等を)エクスポートしないようにしています。

さらに #+BIND: でそれらの関数を変数 org-export-filter-timestamp-functionsorg-export-filter-strike-through-functions に設定しています。

これであとはエクスポートすれば time stamp [2020-12-19 Sat 14:06][] が削除され、 abc +def+ ghi の部分が abc ghi になるはず……

あれれ、HTMLでエクスポートしてみましたがフィルタが適用されていません。

ソースブロック(#+BEGIN_SRC#+END_SRC)の部分はエクスポート時にyes/noの確認がありyesを選択しました。 tmp-f-timestamptmp-f-strike-through はちゃんとEmacs内に登録されているので評価されていることは間違いありません(エクスポートが終わっても tmp- で始まる関数が残っているのは不愉快ではありますが)。

変数 org-export-filter-timestamp-functionsorg-export-filter-strike-through-functionsnil 。となるとBIND( #+BIND: )の部分が機能していない? しかし調べたところ #+BIND: はエクスポートの間だけバッファローカル変数になると書かれています。なら今nilでも当然ですが……ははぁ、これはセキュリティがらみですね。BIND部分を無条件で評価してしまうと他人から貰ったorg文書をエクスポートしたときにイタズラされる可能性があります。

探してみると org-export-allow-bind-keywords という変数があって nil になっていました。試しにバッファ内で M-: (setq-local org-export-allow-bind-keywords t) してみたらちゃんとフィルタが機能しました。

うーんしかし org-export-allow-bind-keywords を常に t にするのは少々不安ですし、どうするべきなんでしょう。

試しに (setq-local org-export-allow-bind-keywords t) をソースブロックの中に入れてみました。

#+BIND: org-export-filter-timestamp-functions (tmp-f-timestamp)
#+BIND: org-export-filter-strike-through-functions (tmp-f-strike-through)
#+BEGIN_SRC emacs-lisp :exports results :results none

  ;;; 追加!!!
  (setq-local org-export-allow-bind-keywords t)

  (defun tmp-f-timestamp (s backend info)
    (replace-regexp-in-string "&[lg]t;\\|[][]" "" s))
  (defun tmp-f-strike-through (s backend info) "")
#+END_SRC

time stamp [2020-12-19 Sat 14:06]

abc +def+ ghi

ファイルを開き直してエクスポート(ソースブロックの評価はyes/no確認あり)してみるとちゃんとフィルタが機能してブラケットや取り消し線部分が消去されていました。つまりBINDとソースブロックを評価するセキュリティリスクがソースブロックに一本化されたわけです。どうなんだろうこれ。

最初からBINDなんか使わなければいいんじゃないでしょうか。

#+BEGIN_SRC emacs-lisp :exports results :results none
  (setq-local org-export-filter-timestamp-functions '(tmp-f-timestamp))
  (setq-local org-export-filter-strike-through-functions '(tmp-f-strike-through))

  (defun tmp-f-timestamp (s backend info)
    (replace-regexp-in-string "&[lg]t;\\|[][]" "" s))
  (defun tmp-f-strike-through (s backend info) "")
#+END_SRC

time stamp [2020-12-19 Sat 14:06]

abc +def+ ghi

うん、これでもちゃんとフィルタされます。

逆にBINDだけにするなら次のようにすれば良いでしょう。

#+BIND: org-export-filter-timestamp-functions ((lambda (s backend info) (replace-regexp-in-string "&[lg]t;\\|[][]" "" s)))
#+BIND: org-export-filter-strike-through-functions ((lambda (s backend info) ""))

time stamp [2020-12-19 Sat 14:06]

abc +def+ ghi

この場合 org-export-allow-bind-keywords 変数が t ならフィルタされ nil ならされません。 org-confirm-babel-evaluate 変数のようにBINDを評価するときにyes/no確認が出せれば良いのかもしれないが、そういう設定は見当たりません。まぁ、そこまでするならソースブロックで良いでしょう。

ちなみにソースブロックを使う方法で tmp-* 関数が残ってしまうのが気に入らなければ次のようにlambdaにしてしまえば良いのでしょうきっと。

#+BEGIN_SRC emacs-lisp :exports results :results none
(setq-local org-export-filter-timestamp-functions
            (list (lambda (s backend info)
                    (replace-regexp-in-string "&[lg]t;\\|[][]" "" s))))
(setq-local org-export-filter-strike-through-functions
            (list (lambda (s backend info)
                    "")))
#+END_SRC

time stamp [2020-12-19 Sat 14:06]

abc +def+ ghi

評価するかいちいち確認するのが嫌ならば(かつ org-confirm-babel-evaluatenil にするのが嫌ならば)、あらかじめ何らかの条件で自動的にフィルタが設定されるようにどこかに仕込んでおくことになりそうです。